ザルツブルク音楽祭 2014 -その3 歌劇「ばらの騎士」

f:id:butcher59:20140826212825j:plain

昼に演奏会を聴いて、夜にオペラ。しかもリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」。ウィーン・フィルの皆さんは相変わらず昼夜頑張っているので、見物する方も心していかねば。

今年はリヒャルト・シュトラウスの生誕150周年にあたるメモリアル・イヤー。その年に「ザルツブルク音楽祭デビュー」を果たして「ばらの騎士」を観られるというのは、なかなかに幸せ。加えて、このオペラを生で観るのも初めてなので。

今回の席は、1階席中段の上手寄り。舞台も近い。すぐ前は一番高い席なので、近くをロングドレスを着たご婦人が行き交って華やか、というよりアウェー感が増してくる。

さて肝心のオペラの話。途中雑多な役がたくさん出て来るけれど、メインのキャストは3人のソプラノ/メゾソプラノ(元帥夫人、オクタヴィアン、ゾフィー)と1人のバス(オックス男爵)。この4人がとにかく素晴らしかった。ザルツブルクでもウィーンでもオケとコーラスは同じ(ウィーン国立歌劇場)なのだけれど、メインキャスト(歌手)の選り抜き感は格別だ。

再び、同行のI先輩曰く「女声3人は、元帥夫人役が締めてるよね」。その通りですね。元帥夫人役のクラッシミラ・ストヤノーヴァの経歴を見ると、この役は今回が デビューらしい。それを抜きにしても素晴らしい出来だ。1962年生まれというから、50代の円熟期を迎えてようやく歌える役なのかも知れない。第1幕の最後のモノローグも素晴らしいし、第3幕の女声3人の三重唱のリード役も頼もしい。

オクタヴィアン役のソフィー・コッホは、この役を得意としているとあって、堂に入っている。最初こそ「もう少し若かったら」と思わなくもなかったが、すぐに違和感は消える。

ゾフィー役のモニカ・エルトマンという歌手は、美しいソプラノだ。線(声)が細い感じもするが、それは役の性格付けかも知れない。容姿の可憐さも、オクタヴィアンがひと目惚れするという筋を無理なく納得させてくれる。

オックス男爵役のギュンター・グロイスベックは、従来の「好色で粗野な中年オヤジ」というパターンからは遠く、見掛けはハンサムな壮年あるいは青年男子、という感じ。でも声には迫力がある。

舞台装置は、新しい演出らしく背景にウィーンの風景写真を大胆にリアプロジェクションした、省略の利いた装置だ。扮装もオリジナルの「マリアテレジアの時代(18世紀中葉)」から100年以上は下っている。ということで、キャストの容姿・扮装と相俟って随分とスマートな印象の舞台だ。

f:id:butcher59:20140817223421j:plain

それにしても、リヒャルト・シュトラウスの音楽で繰り広げられる4時間以上ものオペラを生で観る、というのはやはり凄い。(もっともリヒャルト・シュトラウスの豊穣な音楽の上で歌うというのは、結構難しいんじゃないかとも思うけど) それがウィーンフィルの演奏であれば尚更。 ところどころ眠気を覚まさせる様にチューバの吠えるところがあるのもシャレが効いている。

開演の午後6時にはまだ随分明るかったが、終演の11時近くにはすっかり暗くなっている。そこに遠景のホーエンザルツブルク城がライトアップされて美しい。今日はザルツブルクに来て、実質初日というのに、もうクライマックスを迎えてしまった感じ。もう明日の「ドン・ジョバンニ」を残すのみ。

f:id:butcher59:20140817205822j:plain

Sunday, 17 August 2014

 

RICHARD STRAUSS / DER ROSENKAVALIER
Comedy for music in three acts
Libretto by Hugo von Hofmannsthal

 

Franz Welser-Möst, Conductor
Harry Kupfer, Director
Hans Schavernoch, Sets
Yan Tax, Costumes

 

Krassimira Stoyanova, The Feldmarschallin, Princess Werdenberg
Sophie Koch, Octavian
Mojca Erdmann, Sophie
Silvana Dussmann, Marianne Leitmetzerin
Wiebke Lehmkuhl, Annina
Günther Groissböck, Baron Ochs auf Lerchenau
Adrian Eröd, Herr von Faninal

 

ザルツブルク音楽祭 2014 -その2 「ウィーン・フィル演奏会」

今回の最初の演目は、ムーティ指揮のウィーン・フィルの演奏会。

夜にはオペラ(「ばらの騎士」)の上演を控えているので、開演はウィーンでの定期演奏会と同じ様に午前11時。10時くらいにはもう会場の祝祭大劇場の前には聴衆が集まって来る。昼間の演奏会だから、ロングドレスこそ見ないけれど、皆それなりにドレスアップして華やかな雰囲気。それにしても劇場の前は車寄せがある訳でもなく、劇場と向かい側の建物に挟まれた大して広くもない道路。それを遮断する訳でもなく、群集を分け入って乗用車やタクシーが乗り付けるのには閉口する。

f:id:butcher59:20140817173706j:plain

祝祭大劇場のホールはどちらかと言えば横長で、2階建ての客席部分の奥行は短く感じる。装飾性は余りなく、背もたれも低く押さえられて開放感がある。今回の席は2階下手の中段。オーケストラも良く見渡せる。オペラ上演用のオケピットにふたをして、その上から舞台前部に掛けて並ぶので、オケは随分と近く感じる。

f:id:butcher59:20140817104235j:plainf:id:butcher59:20140817211146j:plain

プログラムは、シューベルトの交響曲第4番とブルックナーの第6番。全く同じプログラムを今年の1月にムジークフェラインの定期演奏会で聴いたけれど(リッカルド・シャイーの指揮)その時とは全く違う音がする。指揮者の違いよりは、会場の違いだろう。ここは残響は大分短くて、音のクラリティが高い。この会場の響きは、かつて建設を主導したというカラヤンの趣味じゃなかろうか?というのは、私の意見。

f:id:butcher59:20140817131438j:plain

同行の尊敬するI先輩曰く「シューベルトなんか演奏しても、後打ちがさりげなくキチンとしていたりして、ダレない。やっぱり違うね。」そういうことなんでしょうね。ムーティの指揮振りもかつてに比べればずっとコンパクトになって、スッキリしている気がする。

f:id:butcher59:20140817115349j:plain

演奏会が終わっても、まだ午後1時。外に出れば殆ど雲も無い快晴で、太陽が眩しい。夏の音楽祭はやっぱり気持ちが良い。

Sunday, 17 August 2014

 

VIENNA PHILHARMONIC / RICCARDO MUTI

- Commemorating the 25th anniversary of the death of Herbert von Karajan -

 

FRANZ SCHUBERT / Symphony No. 4 in C minor D 417, “Tragic”
ANTON BRUCKNER / Symphony No. 6 in A

 

ザルツブルク音楽祭 2014 ー その1 チケットの調達

今週は遅めの夏休みを貰って、ザルツブルク音楽祭を見物に。ウィーンまでは何度もやって来ているし、ザルツブルクへもこれが3度目だけれど、かの有名な音楽祭見物はこれが初めて。「世界一有名で豪華な」という枕詞に怖気付いて、二の足を踏んでいたけれど、誘ってくれる人があったのでようやくやって来れた。来てみればやはり素晴らしく、「なんでもっと早く来なかったのだろう」と後悔さえ覚える有様。

このあと今回観たひとつの演奏会(ウィーンフィル)と、ふたつのオペラを順に記録して行きます。

f:id:butcher59:20140822184601j:plain

まず、その前にチケット入手の顛末から。
 
遡ること昨年の11月に、今年のプログラムとチケットの抽選申し込み受付が音楽祭のサイトで始まった。申し込み受付は1月の中旬締切で、その間に受け付ける限りは遅くても早くても関係ない、とのことだけれど、そこは気持ちの問題で、受付開始日に即申し込み。申し込んだのは、以下の演目:
  •  ムーティ指揮/ウィーンフィルの、シューベルトの4番とブルックナーの6番の交響曲の演奏会
  • オペラ「ばらの騎士」(ウェルザー=メスト指揮)
  • オペラ「ドン・ジョバンニ」(エッシェンバッハ指揮)
 第1希望は、値段的にはどれも真ん中辺りのカテゴリーで、第2希望として上下少し幅を持たせた。そして抽選に通ると2月下旬から3月一杯に順次チケットが郵便で届くという仕組み。
 
 結局、今回申し込んだ演目は全部取れたけれど、希望通りのカテゴリーはウィーンフィルの演奏会のみで、「ドン・ジョバンニ」は大分安いカテゴリー、そして「ばらの騎士」はなんと第1希望も第2希望も外れたかなり高い席。但し、チケットの合計金額は、第1希望の合計金額とほぼ同じなので、その枠内で調整してくれたのかな?
 
いずれにしても3つで総額400ユーロを少し超える金額となり、勿論安いとは言えないけれど、エージェントを通さずに額面で買えた訳だし、また今回は同行者を含めて4名分を申し込んで、皆同じクラスで並びの席を取れたので、上出来だろう。もっともネットで見る限りでは「取れなかった」という話も余り見かけないので、結構どうにかなるのかも知れない。
 
それにしても、ザルツブルク音楽祭のチケットって、思いの外小さい。ちょっと大きめのチケットの半券ほどの大きさしかない。

f:id:butcher59:20140824221317j:plain

第5回ウィーンフィル定期演奏会 (ムジークフェライン)

f:id:butcher59:20140112102852j:plain

Samstag, 11. Janner 2014  15.30

Musikverein, Grosser Saal

5. Abonnementkonzert

Dirigent Riccardo Chailly

Orchester Wiener Philharmoniker

Violine Leonidas Kavakos

Programm:

Jean Sibelius

Finlandia, op. 26

Konzert fur Violine und Orchester in d-Moll, op. 47

Anton Bruckner

Symphonie Nr. 6 in A-Dur, WAB 106

 シベリウスのコンチェルトは、ジネット・ヌブー以来女性奏者ばかり聞いていたけれど(主に録音モノの話)、今回のソロは、ギリシャ人のレオニダス・カヴァコス。シベリウス・コンクールの優勝者で、通常版(確定稿)の録音は勿論、一般には公開されていない初稿譜を親族に特別の許可を得て録音したというから、このコンチェルトへの造詣は深いのだろう。演奏は、1,2楽章は内省的な印象を受けたけれど、終楽章は思いの外アグレッシブで、附点音符のリズムは転んでしまわないかと思うほど前のめり。ソリストとしてはかなりアクションの小さい人だが、ダイナミックレンジも広いし、見ている感じと出ている音がアンバランスな感じさえする。終わった後は、カーテンコールで4回ほど呼び出されてアンコールも披露した。弾いた曲は、あのかわいいバッハのガボット。それをスタンドカラーの黒ずくめスーツに髭の男が、音を確かめる様にぎこちない感じで弾くので、思わず微笑んでしまう。

メインはブルックナーの交響曲第6番。正直に言うと、僕はブルックナーの交響曲には余り馴染みがない。理由は余り突き詰めたことはないが「何だか全奏が多過ぎる、掴み難い、退屈」という印象があった。まぁ余りにも断片的かつ乱暴な印象ですけどね。ブルックナーを生で聞くのも今回が初めて。

結論から言えば、やはり生で聞かなきゃダメですね。交響曲とは言えどこかで旋律を追いかけていることが多いけれど、ブルックナーは本当に響きの音楽だと思うし、生で聞くとその響きが、そして響きの中で違う楽器がいろいろな事をやっているのが聞き取れて、面白い。やはり凡百のオーディア装置だけで「ブルックナーは」と語ってみても(良きにつけ悪しきにつけ)始まらない、という気がする。ウィーン・フィルというオケで、ムジークフェラインという演奏会場で聴くから余計にそれを感じられるのかも知れないが。今更「初めてのブルックナー体験」だけれど、幸せでした。

今回の席は、舞台に向かって下手の「パルテレ-ロジェ8」。平土間から階段を上がって一段高くなったサイドの席。ロジェというから本来はボックス席の意味だけど、仕切りはロープ1本なので、実質は「バルコン(バルコニー)」と言っていい。

席からは平土間の客席が一望出来る。この演奏会は朝11時からなので、窓から外光が入って独特の雰囲気を作る。勿論直射光ではないが、陽が差したり陰ったりすれば、中も明るくなったり陰ったりするので思わぬ効果がある。勿論演奏の響きとシンクロしている訳はないが、ところどころそんな錯覚を覚えるのだ。

f:id:butcher59:20140112105351j:plain

ウィーン・フィルの定期演奏会はネットでは買えないので、エージェントに頼むのだが、お世話になったのはココ。今回初めて頼んでみたが、メールの受け答えも親切で、料金設定も現地エージェントの費用、日本側の費用とよく判る様になっているのが有難い。結果としては、いつも使っていたエージェントに比べて幾分か安く上がった。

それにしても、今回の席はいつにも増してアウェー感が高かった。小さい椅子が隙間なく並べられているところに殆ど隣りの人と触れんばかりに座るのだけれど、周りは全て定期会員の様で(私の席も定期会員が売りに出したもの)、そこかしこで挨拶が交わされ、何だか私が間に居て邪魔をしている様で申し訳無かった。ご婦人方が多かったせいもあり、本当に香水にむせた。(それだけ「良い席」ということで、贅沢を言っちゃいけませんが)

さて、これにて今回のウィーンは見納め、聞き納め。ほぼ丸2日の滞在で、オペラを二つ、定期演奏会に室内楽演奏会、とウィーンフィルの音楽を堪能した。もはやウィーンで他の観光に時間を費やす気もなく、合間には街を歩きカフェで寛ぐだけなので、思ったよりゆっくり出来た。ちょっとこのパターンが定番になりそう。

f:id:butcher59:20140112132736j:plain

モーツァルト/歌劇「ドン・ジョバンニ」 (シュターツオパー)

短く刈り込んだ髪に、黒いレザーのパンツとベストを纏う長身のマッチョ。それが今回のドン・ジョバンニ。演じるのは、Adam Plachetkaというプラハ出身のバス-バリトン。1985年生まれで、まだ30歳にもなっていないが、堂々とした、シャープだがふてぶてしいドン・ジョバンニだ。プラハで20歳でプロデビュー、ザルツブルク音楽祭にも22歳で出ているというから若き実力者だ。

ドナ・アンナ役のロシア人のソプラノ(Hibla Gerzmava)はちょっと太目で、マッチョのドン・ジョバンニとは少し見た目のバランスが悪いが、歌は素晴らしい。

舞台装置は終始ダーク。時代設定も勿論変えられていて、おそらく現代に近いいつか。

私としては、通常その手の設定を変えた演出には余り好意的ではないのだが、今夜はそれなりに面白かった。歪んだ矩形のフレームに場面ごとに象徴的な背景が投影されるが、基本的には暗いモノトーンの装置。終幕だけは、バロック時代の華やかな衣装を纏う仮装パーティー、という設定で、ドン・ジョバンニがオリジナルの時代衣装に身を包む、という趣向には思わずニヤリ。

実はこのオペラを生で観るのは今回が初めてだけれど、「ドン・ジョバンニ」の音楽はこんなに緊張感のあるものだったのか、と思い知らされた。

Wiener Staatsoper

Samstag, 11. Janner 2014, 19:00

DON GIOVANNI

Wolfgang Amadeus Mozart

Alain Altinoglu | Dirigent

Jean-Louis Martinoty | Regie

Hans Schavernoch | Ausstattung

Yan Tax | Kostüme

Fabrice Kebour | Licht 

  • Adam Plachetka | Don Giovanni
  • Hibla Gerzmava | Donna Anna
  • Rolando Villazón | Don Ottavio
  • Malin Hartelius | Donna Elvira
  • David Bizic | Leporello

f:id:butcher59:20140111223041j:plain

ウィーンフィルメンバーによる室内楽演奏会 (シュターツオパー)

この演奏会は日本では見落としていて、当日の朝になって見つけたもの。すぐにオンラインでチケットが買えたので駆けつけたというわけ。いやはや便利な世の中になりましたね。

チケットを取ってから慌てて調べたら、オペラのシーズン中、月に1回ウィーンフィルのメンバーがいろいろなフォーマットの室内楽を演奏するシリーズ物で(5月は2回有って全部で10回)、弦楽四重奏のプログラムは今回だけ。といっても、事前に判ったのはそこまで。具体的な曲名は会場に着くまで判らなかった。

演奏会場は、オペラハウスの2階上手にある「マーラー・ザール」。あの「魔笛」のタペストリーの掛かっている細長いホールで、普段は幕間の休憩室に使われているところ。そこに演奏者用の台を設けて、あとは200席ほどの椅子が並べられているだけ。それでもとても良い音がする。

f:id:butcher59:20140111114937j:plain

シュトイデというのは、第1バイオリンでリーダーのフォルクハルト・シュトイデ氏の名前を取っている。迂闊にも知らなかったが、94年からウィーンフィルのコンサートマスターを務めている方。キュッヒル氏、ホーネック氏と来て、初のコンサートミストレスとして話題になったダナイローヴァ氏は知っていながらこの人を知らなかった。申し訳ない限り。

それで、肝心の演奏の方は…

曲は、モーツァルトとヤナーチェクに、ブラームス。極めてメリハリが効いていて、会場のせいもあるのだろうか、凄く鳴りが良い。メンバーは皆40歳前後の壮年期のプレーヤーということもあってか、とても力強い。それ故に、特にブラームスなんて(あるいはモーツァルトだって)「違う」という向きがあるかもしれないが、僕は肯定的。予定調和的なアンサンブルより、奏者の遣り取りがアグレッシブに伝わって来るのが小気味好い。このアンサンブルでベートーベンや、あるいはラヴェル辺りも聞いてみたい。

2002年の創立だというからもう10年立つ団体だけれど、まだCDも1枚しか出ていないので(カメラータトウキョウから出ているチャイコフスキーとボロディンのセット)、基本的には生演奏に接するしかないが、機会があれば聞き続けて行きたいものだ。それにしても、クラシックのディスク事情は大変だ。カルテットだって、あのアルバンベルクQのベートーベン全集が輸入盤とはいえ、2000円台だもの。

ところで今日の会場には、チラホラ学齢前とおぼしき子供たちも混じっていた。僕の座っていたのは大分後方だったけれど、すぐ近くの席にも3人くらい並んで居た。やはりなかなかジッとしていることは難しい様で、演奏中も始終ゴソゴソやっているし、隣の子や親に話し掛けたりして落ち着かない。演奏が止る様な事故にはならなかったが、近くにいると相当に気になった。日本であれば、周囲の人が白い目を送ったり、親や子供を睨み付けかねないところだけれど、周りの人たちを見ているとそんな素振りは全く無い。後ろを振り返ったのは僕の斜め前に座っていた日本のご婦人とおぼしき人だけ。

考えてみれば、ウィーンでもオペラやオーケストラの演奏会ではこれほど小さい子供はまず見掛けない。土曜日の昼で料金も安め、時間も短めだし、会場もそんなに堅苦しくない、となれば彼の地では小さい子供を連れて来るには格好の演奏会なのかも知れない。聴衆の皆さんの反応を見ていると、そういう了解が予めある様にも思える。「それにしても、ウィーンフィルメンバーの演奏会だぜ」と思うのは、余所者の都合かも知れない。

個人的には、冬のウィーンでブラームスの室内楽を聞けたのには特別の感慨がある。ブラームスの室内楽、特に緩徐楽章の多くには、晩秋から冬のウィーンの雰囲気を感じることが多いが(一寸ステレオタイプかな?)、ついぞ生の演奏に触れる機会には恵まれなかった。

「思わぬ拾い物」というには、余りに貴重な演奏会だった。

Winer Staatsoper

Gustav Mahler-Saal

Samstag, 11. Janner 2014, 11:00

KAMMERMUSIK DER WIENER PHILHARMONIKER 5 

STEUDE QUARTETT

Volkhard Steude | Violin

Holger Groh | Violin

Elmar Landerer | Viola

Wolfgang Hartel | Violoncello

  • Wolfgang Amadeus Mozart: Streichquartett G-Dur KV 387
  • Leos Janacek: Streichquartett Nr. 1 "Kreutzer-Sonate"
  • Johannes Brahms: Streichquartett c-Moll op. 51/1

 

ドニゼッティ/歌劇「愛の妙薬」 (シュターツオパー)

f:id:butcher59:20140112174954j:plain

いよいよ今回の旅行の初日。題名だけは良く知っていたけれど、初めて観る演目。

殆どメインキャスト(ソプラノ、テナー、バリトン、バス)が歌い進めるシンプルな作品なので、歌手がはまれば素直に楽しめる。最近はオリジナルの時代設定や役柄を変えて「翻案」してしまう作品ばかりだけれど、さすがにこの作品でそんなに手の込んだ演出がされることもないのだろう。変な引っ掛かりを覚えないで済むのが有難い。

富農の娘役のソプラノはイスラエル出身の人だが、少女時代はバレリーナを目指していたそうで立ち姿も美しく絵になる。なかなか素敵。

胡散臭い、人を食った様な「愛の妙薬」売りの博士役のバス歌手は、このオペラハウスの座付きの歌手らしく、また十八番の役でもあるのだろう、カーテンコールではひときわ大きな拍手を受けていた。フォルクスオパーのオペレッタなどを観ていても思うのだけれど、定番のプログラムでベテランの座付き役者(じゃなくて歌手ね)がしっかりと脇を固めているのを観ると「これが伝統なんだな」と感心する。

それにしても、いつも着いた日の演目は睡魔との闘いだ。短かめの演目で助かった。

Wiener Staatsoper

Freitag, 10. January 2014  19.30

L'ELISIR D'AMORE

Gaetano Donizetti

Guillermo Garcia Calvo | Dirigent

Otto Schenk | nach einer Inszenierung von

Jurgen Rose | Ausstattung

  • Chen Reiss | Adina
  • Lawrence Brownlee | Nemorino
  • Mario Cassi | Belcore
  • Alfred Sramek | Doktor Dulcamara

f:id:butcher59:20140112175939j:plain

f:id:butcher59:20140112180054j:plain