映画「チェンジリング」

映画「チェンジリング」を観た。クリント・イーストウッドの監督作で、アンジェリナ・ジョリーの主演。

材料はダークなものが多いけれど(子供を狙った猟奇的殺人やその犯人の絞首刑シーンなど)、作り方は随分ストレートに思えた。物語の前半で子供をさらわれた主人公が、警察から謂われない中傷や虐待さえ受け、観る者に義憤を生じさせ、後半でそれを解消させて行くという筋立てはそんなにひねりもないシンプルでストレートなものだけれど、飽きはしない。

ストレートと言えば、あのジョン・マルコヴィッチが警察の腐敗を糾弾する活動家(宗教家)に扮していたが、これも彼に似ずストレートな役回り。本当は影で何かエキセントリックな事をしでかしているのではないかと、最後まで疑った。なにしろ「ザ・シークレットサービス」でイーストウッド扮する老エージェントに屈折したシンパシーを送る大統領暗殺(未遂)犯を演じたマルコヴィッチだから。(そう言えば、ゲーリー・オールドマンも「バットマン」ではすっかり善い人になってしまったし。)

それでもやはり、これはアンジェリナ・ジョリーの映画だ。これまではセクシーさやワイルドさ(多くはその両方)を売りにする役柄が多かったと思うが、この映画ではそういったものに寄らない、見事なまでの「演技派女優」の風格。彼女の目と唇(紛れもないジョン・ボイトの血!)で全ての感情を表現する。彼女はこの演技でオスカーにノミネートされた訳だけれど、結局受賞を逃した。正直あれで取れなかったら、この先どういう作品で取るのかという感じだが。やっぱり物語が、余りにストレートに過ぎたか?

加えて特筆すべきは、プロダクション・セットやコスチューム。「金に飽かせて」とハリウッド映画を揶揄する声は多いが、この映画の美術や衣装は尊敬に値する。路面電車や電話交換局(主人公の職場)でローラースケートを使わせたのは、1920〜30年代の雰囲気を良く伝えている様で面白い。