「ドゥダメル/ウィーン・フィル」演奏会(コンツェルトハウス)

昨夜の席は、3階の最前列ほぼ中央。会場には、ドゥダメルの故郷ベネズエラ中南米出身の人たちが詰め掛けていたのだろうか、僕の席の周りでもスペイン語が飛び交っていた。

1曲目は、ロッシーニの「『泥棒かささぎ』序曲」。ドゥダメルは舞台に登場すると、聴衆の拍手に応えるのもそこそこに、オケの方に振り向きざま、もうタクトを振っている。この辺りは、なかなかカッコ良い。ロッシーニの序曲の小気味良いフレーズはやはりこういう若々しい快活な指揮振りに合う。

2曲目の作曲者フリアン・オルボーンという人は、故人だがスペイン出身の現代作曲家。と言っても、これまで全く知らない人だけど。緩徐楽章を挟んだ3楽章構成で、両端楽章はリズミカルな曲でいわゆる現代曲の難解さは無い。

休憩を挟んで、4曲目はバーンスタインの「オーケストラの為のディベルティメント」。後で調べたら、ボストン交響楽団の委嘱曲だったそうで、確かに8楽章構成の最後の楽章は「BSOよ、永遠なれ」というタイトルだ。BSOは勿論、Boston Symphony Orchestra のこと。初演は小澤征爾が指揮をしているそうだ。楽章毎にワルツやマズルカ、トロット、サンバなどのリズムを取り入れているが、曲想はミュージカル風のものがあったり、バラードっぽいものがあったり、雑多だがこれも肩の凝らない音楽だ。途中、ベートーヴェンの5番シンフォニーのにそっっくりのオーボエのソロが出て来たりして、驚かされた。

泥棒かささぎ」も含めて、こういうリズム感はやはりこの人(ドゥダメル)の持ち味なのだろう。(勿論、それだけの筈も無いが) ただこの人の指揮振りを客席から見ている限りは、情熱的というよりむしろクールな印象を受けた。どちらかと言えば小柄な人だと思うけれど、なかなかに魅力的な立ち姿、指揮姿だと思う。クライマックスではジャンプしていたけどね。

さて、最後はラヴェルの2曲:「亡き王女の為のパヴァーヌ」と「ボレロ」。

パヴァーヌ」のホルンのソロは、音こそ外さなかったがなかなか苦労していた印象。やはりウィンナホルンでこういうソロは、難しいのかしら。

ボレロ」も各ソロが恐々と吹いている(実際恐いソロだと思うが)様に聞こえたのは考え過ぎか? ただはっきり言えるのは、サックスはちょっと下手。ウィーン・フィルにサックス奏者はいないだろうから、クラリネットの吹替か? エキストラか? それにしても...

いずれにしても、ラヴェルの2曲は快心の出来とは言い難かったのではないか?

このプログラムは、ウィーンの前にルツェルン音楽祭でやっていて、その模様はインターネットでストリーミングされているというから、日本に戻ったらぜひ比べてみよう。ドゥダメルウィーン・フィルは、今夜同じプログラムをムジークフェラインでもやる。 本当はそれも聞き比べたいところだが、今更チケットは入手出来ないだろうし。

このコンビはこの後も、来月は米国公演で共演する予定で、ドボルザークの「新世界」交響曲やヨーヨー・マシューマンの協奏曲も演るそうだ。ぜひそちらのプログラムを聴きたいところだけど。

10月には、ドゥダメルが出たベネズエラのユースオーケストラがウィーンで公演するそうだ。何年か前にはドゥダメルが率いて来ているそうだし、そもそもベネズエラのユースオーケストラが注目を浴びたのは、ロンドンのPromsでのことだそうだから、ヨーロッパではもう良く知られた存在なのだろう。

Thursday, 23 September 2010
Wiener KPonzerthaus (Grosser Saal)
Wiener Philharmoniker, Orchester
Gustavo Dudamel, Dirigent
Programme
Gioachino Rossini: Ouverture zu «La gazza ladra» (1817)
Julián Orbón: Tres versiones sinfónicas (EA)
Leonard Bernstein: Divertimento (1980)
Maurice Ravel:
Pavane pour une infante défunte (1899)
Boléro (1928)