ウィーンフィルメンバーによる室内楽演奏会 (シュターツオパー)

この演奏会は日本では見落としていて、当日の朝になって見つけたもの。すぐにオンラインでチケットが買えたので駆けつけたというわけ。いやはや便利な世の中になりましたね。

チケットを取ってから慌てて調べたら、オペラのシーズン中、月に1回ウィーンフィルのメンバーがいろいろなフォーマットの室内楽を演奏するシリーズ物で(5月は2回有って全部で10回)、弦楽四重奏のプログラムは今回だけ。といっても、事前に判ったのはそこまで。具体的な曲名は会場に着くまで判らなかった。

演奏会場は、オペラハウスの2階上手にある「マーラー・ザール」。あの「魔笛」のタペストリーの掛かっている細長いホールで、普段は幕間の休憩室に使われているところ。そこに演奏者用の台を設けて、あとは200席ほどの椅子が並べられているだけ。それでもとても良い音がする。

f:id:butcher59:20140111114937j:plain

シュトイデというのは、第1バイオリンでリーダーのフォルクハルト・シュトイデ氏の名前を取っている。迂闊にも知らなかったが、94年からウィーンフィルのコンサートマスターを務めている方。キュッヒル氏、ホーネック氏と来て、初のコンサートミストレスとして話題になったダナイローヴァ氏は知っていながらこの人を知らなかった。申し訳ない限り。

それで、肝心の演奏の方は…

曲は、モーツァルトとヤナーチェクに、ブラームス。極めてメリハリが効いていて、会場のせいもあるのだろうか、凄く鳴りが良い。メンバーは皆40歳前後の壮年期のプレーヤーということもあってか、とても力強い。それ故に、特にブラームスなんて(あるいはモーツァルトだって)「違う」という向きがあるかもしれないが、僕は肯定的。予定調和的なアンサンブルより、奏者の遣り取りがアグレッシブに伝わって来るのが小気味好い。このアンサンブルでベートーベンや、あるいはラヴェル辺りも聞いてみたい。

2002年の創立だというからもう10年立つ団体だけれど、まだCDも1枚しか出ていないので(カメラータトウキョウから出ているチャイコフスキーとボロディンのセット)、基本的には生演奏に接するしかないが、機会があれば聞き続けて行きたいものだ。それにしても、クラシックのディスク事情は大変だ。カルテットだって、あのアルバンベルクQのベートーベン全集が輸入盤とはいえ、2000円台だもの。

ところで今日の会場には、チラホラ学齢前とおぼしき子供たちも混じっていた。僕の座っていたのは大分後方だったけれど、すぐ近くの席にも3人くらい並んで居た。やはりなかなかジッとしていることは難しい様で、演奏中も始終ゴソゴソやっているし、隣の子や親に話し掛けたりして落ち着かない。演奏が止る様な事故にはならなかったが、近くにいると相当に気になった。日本であれば、周囲の人が白い目を送ったり、親や子供を睨み付けかねないところだけれど、周りの人たちを見ているとそんな素振りは全く無い。後ろを振り返ったのは僕の斜め前に座っていた日本のご婦人とおぼしき人だけ。

考えてみれば、ウィーンでもオペラやオーケストラの演奏会ではこれほど小さい子供はまず見掛けない。土曜日の昼で料金も安め、時間も短めだし、会場もそんなに堅苦しくない、となれば彼の地では小さい子供を連れて来るには格好の演奏会なのかも知れない。聴衆の皆さんの反応を見ていると、そういう了解が予めある様にも思える。「それにしても、ウィーンフィルメンバーの演奏会だぜ」と思うのは、余所者の都合かも知れない。

個人的には、冬のウィーンでブラームスの室内楽を聞けたのには特別の感慨がある。ブラームスの室内楽、特に緩徐楽章の多くには、晩秋から冬のウィーンの雰囲気を感じることが多いが(一寸ステレオタイプかな?)、ついぞ生の演奏に触れる機会には恵まれなかった。

「思わぬ拾い物」というには、余りに貴重な演奏会だった。

Winer Staatsoper

Gustav Mahler-Saal

Samstag, 11. Janner 2014, 11:00

KAMMERMUSIK DER WIENER PHILHARMONIKER 5 

STEUDE QUARTETT

Volkhard Steude | Violin

Holger Groh | Violin

Elmar Landerer | Viola

Wolfgang Hartel | Violoncello

  • Wolfgang Amadeus Mozart: Streichquartett G-Dur KV 387
  • Leos Janacek: Streichquartett Nr. 1 "Kreutzer-Sonate"
  • Johannes Brahms: Streichquartett c-Moll op. 51/1