ザルツブルク音楽祭 2015:歌劇「フィガロの結婚」

今回、一番楽しみにしていたのが、この「フィガロ」。

 
去年の「ドン・ジョバンニ」が面白くて、また今年もダ・ポンテ台本のシリーズで「フィガロ」をやるというので思わず申し込んだ。それが2年続けてのザルツブルク詣出の直接のきっかけでもある。去年の主要キャストのうち、レポレッロ役のルカ・ピサローニとドナ・エルヴィラ役のアネット・フリッシュが、アルマヴィーヴァ伯爵夫妻役で出るのも楽しみ。
 
で、やはりその二人が素晴らしかった。特にアネット・フリッシュ。この人の出番が増える第2幕から俄然面白くなる。まぁ、元々の構成から言っても2幕目から重唱も増えて盛り上がって来るのだが。それにしても、フリッシュはドラマチックなソプラノだ。「フィガロ」はスラップスティック(ドタバタ)に近い喜劇的な場面も多いが、ロジーナ(伯爵夫人)のアリアだけ急にシリアスな雰囲気になるのだが、フリッシュのソプラノは更に辺りを払う感じがする。モーツァルトも良いが、プッチーニやヴェルディの役も観てみたい。
 
ピサロー二は相変わらずの伊達男振り。きっと「追っかけ」もいるだろうな。今年まだ40歳になったところだから、バリトンとしてはこれから脂の乗るところだろう。
 
指揮者は、これがザルツブルクデビューとなるダン・エッティンガー。迂闊にも知らなかったが、2010年から東フィルの常任を務め(今年から桂冠指揮者)、新国立でも度々振っているという。やっぱり日本で日常的に観ておかないといけませんね。イスラエル出身で、バレンボイムの秘蔵っ子といわれ、ベルリンでカペルマイスターを務めていたということで、今回も自らレチタティーヴォのチェンバロを弾きながら指揮していた。指揮振りは見るからに才気煥発という感じ。この人もこれからが楽しみ。
 
さて、衣装や小道具の時代設定は20世紀初頭というところか。「伯爵と使用人を巡る物語」として、カツラとか衣装とか、いわゆるコスチュームプレイをせずに成り立つギリギリの年代ということか。セットは日本の喜劇やコントにも有り勝ちな2階建の額縁構造だが、いくらスラップスティックには向いているにしても、ちょっとせせこましいかも。
 
「フィガロ」はアンサンブル(重唱)も多くて、ザルツブルクの様に歌手を揃えられるところでは本当に楽しくていい。
 
それにしても、今年のザルツブルクは暑過ぎる。人気の演目だから客席は満員だけれど、おそらくエアコンは無いか、あってもほとんど利いていなかったので、男たちは途中で上着を脱ぎ出すものも多かった。僕もそうだったが、さらには念の為に日本から持参した扇子も本当に役に立った。今年のフィガロは、その意味でも忘れられなくなりそうだ。
 
9 August 2015, 18:00 Haus für Mozart 
 
LE NOZZE DI FIGARO 
Opera buffa in four acts K. 492  by Wolfgang Amadeus Mozart  
Text by Lorenzo Da Ponte after Pierre Augustin Caron de Beaumarchais's play La Folle Journée, ou Le Mariage de Figaro (1778) 
 
Dan Ettinger, Conductor 
Sven-Eric Bechtolf, Director 
Alex Eales, Sets 
Mark Bouman, Costumes 
 
Luca Pisaroni, Il Conte Almaviva 
Anett Fritsch, La Contessa Almaviva 
Martina Janková, Susanna 
Adam Plachetka, Figaro 
Margarita Gritskova, Cherubino 
Ann Murray, Marcellina 
Carlos Chausson, Don Bartolo 
Paul Schweinester, Don Basilio 
Franz Supper, Don Curzio 
Christina Gansch, Barbarina 
Erik Anstine, Antonio 
Concert Association of the Vienna State Opera Chorus  
Vienna Philharmonic 

 

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