ザルツブルク音楽祭 2015:指揮者コンクール ファイナリスト演奏会

さて、指揮者コンクールのファイナリストによる演奏会。

 
会場はザルツブルク大学の講堂。場所は音楽祭の大劇場の真向いにザルツブルク大学の建物があってその裏手。大学自体は17世紀の創立だし、元の講堂も相当古かったらしいが、今の建物は10年ほどまえに建てられたもの。1階に簡単なロビーとクロークがあり、2階が演奏会場なのだけれど、中は本当に講堂といった感じの作りで500席程度の規模だろうか。ステージはおそらく仮説のもの。嬉しかったのは、心地良く空調の効いていたこと。何しろ本当に暑いんだから。
 
指揮者コンクールは、あのネスレのスポンサーで今年初めて開かれたらしい。優勝者は来年の音楽祭でウィーン放送交響楽団との演奏会が行えるという。
 
ファイナリストは3人。リトアニア出身の女性指揮者ジードレ・スレカイト(発音が良く判らない Giedre Slekyte)、イタリア系スイス人のロレンツォ・ヴィオッティ、チェコ出身のジリ・ローゼン。
 
この3人がこの金土日に別々に演奏会を開く。オケはカメラータ・ザルツブルク。プログラムを見てみると、同じものではなくて、中プロに女性歌手によるモーツァルトのコンサート・アリアを挟んで、前プロは序曲や抜粋した楽章が2曲、メインが短めの交響曲という構成を揃えているものの、曲はみなバラバラ。指定されたものなのか、自分で選べるのか興味深いところ。
 
僕の聞いたのは、最終日のジニ・ローゼン君の演奏会。23歳の若者ということで初々しいのは良いけれど、緊張しているのが観ている方にもハッキリ判って、その緊張は最後まで解けきれなかった。「コジ・ファン・トゥッティ」の序曲で木管が早いパッセージで掛け合うところなど、誰かこけるんじゃないかとハラハラした。モーツァルトを得意とするザルツブルクのプロのオケがそんなこともない筈なのに。
 
出色だったのは、指揮者よりむしろモーツァルトのコンサートアリアを歌ったクレア・デ・セヴィーヌというカナダ人のソプラノ。この人も音楽祭のマスタークラスに参加している人なのだが、声も容姿も素晴らしかった。指揮者を差し置いて2回もカーテンコールを受けていた。指揮者のジリ君が少しかわいそうな気もしたが、彼は雰囲気から言うと、俳優の濱田岳を彷彿とさせる感じかな。
 
演奏会は休憩なしに1時間余りで終わり、その後30分ほどの休憩の後にいよいよ最終結果の発表があった。
 
優勝者は… ロレンツォ・ヴィオッティでした。我らがジリ・ローゼンは勝利ならず。やっぱり濱田岳の役どころだからね。
 
ロレンツォ・ ヴィオッティの経歴をみてみたら、これまでにスペインとドイツのコンクールで優勝しているし、幾つかのプロオケとも共演してもうプロとしてのキャリアを初めている人らしい。実は父親もマルチェロ・ヴィオッティという指揮者で、フェニーチェ歌劇場の音楽監督を務めていたが10年ほど前に50歳の若さで逝ってしまったという。何と、日本でも去年東響の演奏会に主席客演の代役で振って話題になっているらしい。おそらくまた日本でも聞けるだろう。
 
10 August 2015, 11:00 Grosse Universitätsaula 
 
AWARD CONCERT WEEKEND 3  
Nestlé and Salzburg Festival Young Conductors Award 2015
 
Jiří Rožeň, Conductor 
Claire de Sévigné, Soprano 
Camerata Salzburg 
 
BEDŘICH SMETANA 
From Triumphal Symphony in E, Op. 6, “Festive Symphony” 
Scherzo: Allegro vivo 
WOLFGANG A. MOZART 
Overture from Così fan tutte, K. 588 
WOLFGANG A. MOZART 
“Vorrei spiegarvi, oh Dio!”, Aria for Soprano and Orchestra, K. 418 
MILOSLAV KABELÁČ 
Symphony No. 4 in A, Op. 36, “Camerata” (1958)
 

 

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