昨夜の「イル・トロヴァトーレ」、やはりネトレプコが凄かった。
生は勿論、録音も録画も知らないままに昨夜を迎えたのだけれど、確かに凄い。どんな声も易々と出している様に思えるし、作品の性格もあって迫力が圧倒的だ。その昔し、オイストラフのヴァイオリンの音を評して「ベルベット・スティール」と言ったらしいけれど、正にその感じ。ベルベットの様になめらかで、鋼の様に強い。
他の主要キャストもネトレプコに負けじと熱演で素晴らしかったが、今日はネトレプコのことだけを記しておきたい。
とはいいつつ、昨晩の「フィデリオ」の後遺症で設定や装置も気になってしまうのだが。今回は何と美術館が舞台。物語の登場人物たちを擬した絵が並び、それらを見ていた美術館の職員(ネトレプコ)が絵に引き込まれ、ヒロインのレオノーラになり、他の人間たちも物語の登場人物に姿を変えて… 眼鏡をかけた地味な制服姿のネトレプコに萌える輩もいるだろうね。まぁ、この際それはどうでもいい。装置と衣装は、渋めの赤、ワインレッドに近い色が基調で統一感があって邪魔をしないのが良かった。
ネトレプコは40台の半ばに差し掛かっているが、今が全盛期なのだろうか。やはり時代を画する歌手っているんだな、としみじみ思う。この先また生で聞けるチャンスに巡り会えるかどうか判らないし、同じ様な感動を味わえるかどうかも判らないが、2015年にザルツブルクでネトレプコを観られたことは、それだけで十分幸せだ。
さて、今回のザルツブルク音楽祭見物はこれにて終了。「フィデリオ」の不満を帳消しにして余りあるネトレプコで大団円。この音楽祭に2年続けて来ることには「何様でもあるまいに」とためらいがあったけれど、思い切って来て良かった。
11 August 2015, 20:00 Grosses FestspielhausIL TROVATOREDramma lirico in four parts by Giuseppe VerdiLibretto by Salvadore Cammarano and Leone Emanuele Bardare after Antonio García Gutiérrez’s play El trovador (1836)Gianandrea Noseda, ConductorAlvis Hermanis, Director and SetsEva Dessecker, CostumesGleb Filshtinsky, LightingIneta Sipunova, Video DesignGudrun Hartmann, Philipp M. Krenn, Associate DirectorUta Gruber-Ballehr, Associate Set DesignerRonny Dietrich, DramaturgyErnst Raffelsberger, Chorus MasterFrancesco Meli, ManricoAnna Netrebko, LeonoraArtur Ruciński, Il Conte di LunaEkaterina Semenchuk, AzucenaAdrian Sâmpetrean, FerrandoDiana Haller, InesBror Magnus Todenes, Ruiz / Un messoMatthias Winckhler, An Old GypsyMembers of the Angelika Prokopp Sommerakademie of the Vienna PhilharmonicConcert Association of the Vienna State Opera ChorusVienna Philharmonic