懐かしい名前

昨日ネットを眺めていたら「日経ビジネスオンライン」のサイトで懐しい名前を見つけた。

栃折久美子」  日本におけるルリユ一ル(工藝製本)の第一人者。「ルリユール」のことは彼女のエッセイ「モロッコ皮の本」で初めて知った。あれはもう随分と昔、多分高校生の頃に読んだ。

記事には彼女の近況が記されているが、もう81歳だと言う。記事には近影も載っていた。年齢を考えれば元気なおばあちゃまの姿だが、あまりピンと来なかった。家に戻ってから、彼女の本を探した。1冊めが「モロッコ革の本」。2冊めが「製本工房から」。両方とも扉に彼女の写真が載っている。そう、あの頃の写真は黒髪のオカッパ。その印象が残っていたので「おばあちゃま」の姿はピンと来なかったのだ。2冊ともカバーの絵は彼女が修行中にノートにとったであろう製本の過程を記したもの。これも印象に残っていた。もう中身は殆ど覚えていないけれど。

今回の記事の趣旨は、工藝製本の第一人者の栃折さんに今流行りの iPad についての感想を聞くというもの。記事の執筆者は、否定的なコメントを予想していたらしいが、彼女のコメントは極く肯定的。コンテンツの表示器としての iPad については高く評価している。考えてみれば、工藝としてのユリユールは消費材としての本とは別物なのだ。

栃折さんが、哲学者の森有正と恋愛関係にあって、そのことを本にもしているというのは迂闊にもこの記事で初めて知った。森有正の本も、大学生の頃「読みかじった」。その頃は、内容が余り理解出来なかったが、書名(例えば「バビロンの流れのほとりにて」とか)に印象付けられる様な雰囲気だけは今でも懐かしく覚えている。そういえば「経験と体験の違い」なんていう話は得意気に吹聴したことは覚えているな。

もう一度彼女の本や、森有正の著作は読み返してみたいね。