映画「スラムドッグ$ミリオネア」

ロンドンから帰る飛行機の中で「スラムドッグ$ミリオネア」を観た。

飛行機の中では新しい映画はなるべく観ない様にしている。面白い映画だったら、小さい画面で観た気になってしまうのも勿体無い気がして。それでも欧州便は10時間以上もあるので、前に観ているものにも飽きて、ついつい新しいものにも目が行ってしまう。まぁ、言い訳はさて置いて「スラムドッグ…」の話。

「貧しい境遇から這い上がる兄弟」「道を踏み外してしまった兄」「巡り会う恋人たち」といった材料は、むしろクラシック。昔の日活映画辺りにもにも良くあったパターンの様な気がする。ただインドと日本では、例えば貧富のダイナミズムも大分違うし、映画のスピード感は正に今のハリウッド映画だ。(監督はイギリス人で製作は米英合作らしけど)

映画の舞台となるムンバイには去年一度行った。テロにみまわれた数ヶ月前のこと。スラムには足こそ踏み入れなかったが、ムンバイを訪れればその存在は隠れ様が無い。そもそも一番大きなスラム地帯は空港の周辺に広がっていて、ムンバイの市街に向かう道からも少しは覗ける。正直、目を逸らしたくなる光景だが。インド映画は全く知らないが、スラムを舞台にした映画なんてあるのだろうか?

この映画は今年、作品賞を始めとして、8つのオスカーを獲得した。オスカーは外国語作品賞やアニメ以外の賞は「英語による作品」が対象と聞いたことがあるが、セリフにはヒンドゥーも随分混じっているようだし、英語の部分もいわゆるインドのアクセントが強い。確か、大分前にベン・キングスレー主演の「ガンジー」もオスカーを取っているが、あれはそういう意味ではインド乃至はインドの偉人を題材にした正統的な米英映画だが、「スラムドッグ…」はもっと生のインドを映し出しているのだろう。

主人公の兄弟とヒロインは、幼年期〜少年期〜青年期をそれぞれ3人で演じているが、とりわけ幼年期と少年期を演じる子役たちが素晴らしい。

エンディングのタイトルクレジットのところで、インド映画の「お約束」シーンが出てくるのが微笑ましい。

やっぱり映画館に観に行けば良かった。この週末から封切りなのに…