ブッチャーはカフェにいる

暖かい季節より寒い季節にウィーンを旅する方が、カフェの有難みがより身に染みる。

大体朝9時にはホテルを出るが、まずカフェでコーヒーを飲みながら何処に行こうか考える。最近はWiFiのあるカフェも多いので、こんな風にブログをアップしたり、メールをチェックしたりするとすぐに1時間位は経つ。それから外に出るが、おおよそ1時間外に居るとまたどこかのカフェに入る。

カフェで昼食を摂れば、オペラや演奏会の終演後の食事もカフェが殆ど。そもそもウィーンにカフェが無ければ、こんなに頻繁にこの街にひとり旅には来なかったと思う。

往復の飛行機の中で「探偵はBARにいる」という映画をやっていたが(大泉洋が意外にハードボイルド風で面白い)、その伝でいけば「ブッチャー(私)はCafeにいる」ということになる。今回もいくつかの店を初めて訪ねてみた。


◆Cafe Museum

Cafe Museum
Operngasse 7 - Karlsplatz
A-1010 Wien
Tel.: (01) 24 100-620
http://www.cafemuseum.at/en/cafe-museum/cafe-museum

かのアドルフ・ロースのデザインで19世紀末に店を開いた有名なカフェ。2009年に一旦店を閉じたが、経営者も変わって、改装してむしろオリジナルのデザインに戻して昨年の10月に再開したという。去年の9月にウィーンに来た時にも覗いてみたが、その時はまだ廃墟の様だった。

ロースのデザインの基本である装飾性を極力排したデザイン、ということだが、オフホワイトの漆喰壁/天井とテーブル、ワイン色のビロード張りの椅子とソファ、茶色い木製の腰板という組合せはシンプルで落ち着く。これでもう少し時代が付いてくれば申し分無い。

シュターツオパーからは200メートル。テアター・アン・デア・ウィーンからも300メートル余り。夜中の12時まで空いているので両劇場の終演後に使うのに丁度良い。


◆Cafe Sperl

Café Sperl
Gumpendorfer Straße 11
A - 1060 Wien
Tel: (01) 586 41 58
http://www.cafesperl.at/

MQ(ミュージアム・クォーター)から程近いが、繁華街のマリアヒルファー通りからは横に入ったいわば裏通りにあるし、リンク通りからは少し離れているので、観光客は余り多くない。ここは建物のコーナーに入口があって、店の中は建物の外壁に沿って左右に分かれている。これは Cafe Museum も同じ造り。

開店は1880年というから相当古い。オリジナルのインテリアかどうかは知らないが、なかなか時代が付いている感じだ。店の右手半分がビリーヤード台で占められていたが、これはオリジナルの設えだろう。Cafe Museum も古い写真で見ると同じ構造になっている。但し向こうは左右が逆。ウィーンで古いカフェの趣きに触れたいなら、この店は良いかも知れない。

ここもホットスポットになっていて、インターネットを無料で使えるのが嬉しい。新聞や雑誌を豊富に供して客を追い立てることをしなかったウィーンのカフェの伝統は、現代のフリー・インターネットにまっすぐに繋がっているんだと思う。