ザルツブルク音楽祭 2014 -その4 歌劇「ドン・ジョバンニ」

かつて「祝祭小劇場」とされた会場は、2006年、モーツァルト生誕250周年に改修されて「モーツァルトのための劇場」(Haus für Mozart)となった。大劇場が出来る1960年まではここが正に「祝祭劇場」だったという。大劇場が裏の岩山をくり抜いて作られたそうだが、モーツァルトのための劇場は岩山の前に横に作られている。入口は大劇場と横並びになっているので、外からはそれと判らない。

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今夜の席は、下手2階のバルコニー席2列目。一番安いカテゴリ-の席。(抽選なので仕方ない) 舞台に近いところなので、舞台の左端は見えない。その代わり、オーケストラ・ピットは良く見える。舞台が近いので、見える限りは歌手たちも良く見える。

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それにしても、随分とドラマチックな「ドン・ジョバンニ」だった。

演出のスヴェン=エリック・ベクトルフは、演劇の俳優兼演出家で、ザルツブルク音楽祭(実は演劇と音楽のフェスティバル)の演劇部門の監督を務めているという人。おそらくそのせいだろう、歌手たちは声は勿論、容姿も含めて魅力的にそれぞれのキャラクターを演じている。

何と言っても、ドン・ジョバンニ役のイルデブランド・ダルカンジェロに凄味がある。徹底的な色悪ぶりがむしろ痛快。ここまで際立つドン・ジョバンニの役作りはこれまで見たことがない。

メインの女性歌手3人もとても魅力的。ドンナ・アンナ役のレネッケ・ルイテンはとてもドラマチックな声をしている。エルヴィラ役のアネット・フリッシュとツェルリーナ役のヴァレンティナ・ナフォルニータはどちらもまだ20歳代だが、素晴らしい出来だろう。エルヴィラのドン・ジョバンニへの愛憎半ばする深情けぶりも、ツェルリーナのうぶな男好きする様子も、素直にドラマとして目と耳に入って来る。

普通は冴えない道化役のレポレッロも、今回のルカ・ピサローニが演じると実は隠れた二枚目だ。ダルカンジェロのドン・ジョバンニと並ぶと、ピサローニのレポレッロの方が背が高くて格好が良い。それを丸メガネを掛けて道化役となるのだが、2幕目でドン・ジョバンニに成りすますところで無理がない。

さすがにこんな風に、声も容姿もはまったキャストを組むというのは、どこのオペラハウスでも出来るというものじゃないだろうね。

舞台装置は、終始ホテルのロビーの様な設定だ。だから男女の逢瀬もあるし、結婚式もある。食事(最後の騎士団長との夕食)も出来る。良く考えたものだ。

さて、普通は最後に地獄に落ちて舞台から消えてしまうドン・ジョバンニだが、今回は消えない。これ以上は、ネタばらしになるので書きませんが...

今回の指揮は、エッシェンバッハ。もう70歳台の半ばだけれど、颯爽とオケをドライブしまくっていた。

休憩時間にロビーで、指揮者のドゥダメルを見かけた。握手位したかったが、関係者らしい人たち5、6人が囲んでいて割り込めなかった。残念。

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これで、今回予定していたザルツブルク音楽祭の3つの演目を鑑賞し終えた。いやいや、本当に来て良かった。先輩に「夏のヨーロッパに行こうよ」と誘われて、安直に発想したザルツブルク音楽祭だったけれど、噂に違わず素晴らしかった。残りの人生、せめてあと一度くらいは来たいものです。

Monday, 18 August 2014

 

WOLFGANG A. MOZART / DON GIOVANNI

Dramma giocoso in two acts, K. 527
Libretto by Lorenzo Da Ponte

 

Christoph Eschenbach, Conductor
Sven-Eric Bechtolf, Director
Rolf Glittenberg, Sets
Marianne Glittenberg, Costumes

 

Lenneke Ruiten, Donna Anna
Anett Fritsch, Donna Elvira
Valentina Nafornita, Zerlina
Ildebrando D’Arcangelo, Don Giovanni
Luca Pisaroni, Leporello
Tomasz Konieczny, Il Commendatore