ザルツブルク音楽祭 2014 -その3 歌劇「ばらの騎士」

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昼に演奏会を聴いて、夜にオペラ。しかもリヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」。ウィーン・フィルの皆さんは相変わらず昼夜頑張っているので、見物する方も心していかねば。

今年はリヒャルト・シュトラウスの生誕150周年にあたるメモリアル・イヤー。その年に「ザルツブルク音楽祭デビュー」を果たして「ばらの騎士」を観られるというのは、なかなかに幸せ。加えて、このオペラを生で観るのも初めてなので。

今回の席は、1階席中段の上手寄り。舞台も近い。すぐ前は一番高い席なので、近くをロングドレスを着たご婦人が行き交って華やか、というよりアウェー感が増してくる。

さて肝心のオペラの話。途中雑多な役がたくさん出て来るけれど、メインのキャストは3人のソプラノ/メゾソプラノ(元帥夫人、オクタヴィアン、ゾフィー)と1人のバス(オックス男爵)。この4人がとにかく素晴らしかった。ザルツブルクでもウィーンでもオケとコーラスは同じ(ウィーン国立歌劇場)なのだけれど、メインキャスト(歌手)の選り抜き感は格別だ。

再び、同行のI先輩曰く「女声3人は、元帥夫人役が締めてるよね」。その通りですね。元帥夫人役のクラッシミラ・ストヤノーヴァの経歴を見ると、この役は今回が デビューらしい。それを抜きにしても素晴らしい出来だ。1962年生まれというから、50代の円熟期を迎えてようやく歌える役なのかも知れない。第1幕の最後のモノローグも素晴らしいし、第3幕の女声3人の三重唱のリード役も頼もしい。

オクタヴィアン役のソフィー・コッホは、この役を得意としているとあって、堂に入っている。最初こそ「もう少し若かったら」と思わなくもなかったが、すぐに違和感は消える。

ゾフィー役のモニカ・エルトマンという歌手は、美しいソプラノだ。線(声)が細い感じもするが、それは役の性格付けかも知れない。容姿の可憐さも、オクタヴィアンがひと目惚れするという筋を無理なく納得させてくれる。

オックス男爵役のギュンター・グロイスベックは、従来の「好色で粗野な中年オヤジ」というパターンからは遠く、見掛けはハンサムな壮年あるいは青年男子、という感じ。でも声には迫力がある。

舞台装置は、新しい演出らしく背景にウィーンの風景写真を大胆にリアプロジェクションした、省略の利いた装置だ。扮装もオリジナルの「マリアテレジアの時代(18世紀中葉)」から100年以上は下っている。ということで、キャストの容姿・扮装と相俟って随分とスマートな印象の舞台だ。

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それにしても、リヒャルト・シュトラウスの音楽で繰り広げられる4時間以上ものオペラを生で観る、というのはやはり凄い。(もっともリヒャルト・シュトラウスの豊穣な音楽の上で歌うというのは、結構難しいんじゃないかとも思うけど) それがウィーンフィルの演奏であれば尚更。 ところどころ眠気を覚まさせる様にチューバの吠えるところがあるのもシャレが効いている。

開演の午後6時にはまだ随分明るかったが、終演の11時近くにはすっかり暗くなっている。そこに遠景のホーエンザルツブルク城がライトアップされて美しい。今日はザルツブルクに来て、実質初日というのに、もうクライマックスを迎えてしまった感じ。もう明日の「ドン・ジョバンニ」を残すのみ。

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Sunday, 17 August 2014

 

RICHARD STRAUSS / DER ROSENKAVALIER
Comedy for music in three acts
Libretto by Hugo von Hofmannsthal

 

Franz Welser-Möst, Conductor
Harry Kupfer, Director
Hans Schavernoch, Sets
Yan Tax, Costumes

 

Krassimira Stoyanova, The Feldmarschallin, Princess Werdenberg
Sophie Koch, Octavian
Mojca Erdmann, Sophie
Silvana Dussmann, Marianne Leitmetzerin
Wiebke Lehmkuhl, Annina
Günther Groissböck, Baron Ochs auf Lerchenau
Adrian Eröd, Herr von Faninal