何がおいしかったか? (ブダペスト・カフェ巡り)

今回の旅行で何がおいしかったか? その答えは比較的簡単。 ウィーンで食べたホワイト・アスパラガスと、ブダペストで食べたフォアグラ、と言っておきましょう。

ホワイト・アスパラガスの話は既に一度書いているけれど、もう一度ウィーン最後の夜にも食べた。その話はまた別のところで。


■カフェ・カラス(ブダペスト) Callas Cafe & Restaurant - Budapest

フォアグラの方は、ブダペストの最後の夜(と言っても二晩しかいなかったけれど)、「トゥーランドット」の跳ねた後にオペラハウスのすぐ隣の Callas というカフェで頂いた。別に狙い定めていった訳ではなく、オペラの余韻が残ってすぐにホテルへ戻る気になれず「ちょっとワインでも」という感じで手近にあったカフェに飛び込んだ。これが大正解。

店内はシンプルなデザインの中にジョルナイ・タイルがアクセントになった、アールデコのテイスト。

ジョルナイというのは、ヘレンドと並ぶハンガリーを代表する陶磁器だけれど、食器だけでなく建築用タイルも作られて、ハンガリーの世紀末建築の重要な素材になっている。僕がその存在を知ったのは20年近く前、初めてブダペストに来た時に訪れたリスト音楽院のホールの内装を目にした時。「世紀末的」と言ってしまえばそれまでだけれど、細かいタイル状の装飾が一面に施され、それが何かしら生き物の様な有機的な、表現し難い光を放って独特な雰囲気を作っていた。後でそのタイルが「ジョルナイ」という工房で焼かれたもので、その妖しい光が「イオシン」という釉薬によるものだという事を知った。

話が長くなったが、このカフェの装飾はむしろ白い壁が基調で、ジョルナイ・タイルが柱や梁の輪郭に施され、それがアクセントになっていて落ち着いた雰囲気を作っている。

さて席について、結局「ワイン1杯」とは行かずお腹が空いて来る。食事用のメニューを見て、そこで初めてフォアグラがハンガリーの名産である事を思い出した。メニューには2品載っている。ひとつは有名な「ロッシーニ・ステーキ」。かの大作曲家ロッシーニ先生が考案したというフィレステーキの上にフォアグラを載せるという美食家ステーキ。(更にトリュフを載せるレシピもある)

ロッシーニ・ステーキ」にも惹かれたが、もうひとつの方が「ハンガリー風フォアグラのソテー」と名付けれているので、「折角だからハンガリー風で行こう」ということにしてこちらを選んだ。

さてその料理がどんなものかというと...

ソテーされた厚さ1cm程度のフォアグラの切り身が3枚、煮込んだ野菜のベッドの上に並べられている。野菜のベッドは、これもハンガリー名産のパプリカとタマネギやトマトを煮込んだものらしい。良く煮込んだラタトゥーユというのを想像して貰うとイメージが近いかも知れない。付け合せはジャガイモのロースト。

フォアグラはキチンと火が通っているけれど、柔らかくてとてもクリーミィ。以前に出張先のフランスで「フォアグラのステーキ」というのも食べさせて貰ったけれど、それは外側が少しカリッと香ばしかった。あれはどうも粉(小麦粉)をまぶしてあったらしい。それに比べるとこのソテーは、シンプルにそのまま焼いている様だ。従来の「フォアグラ」のイメージに比べると、ずっと軽くてフレッシュな感じ。煮込み野菜の自然な甘み(パプリカの風味が良いアクセント)と合せると丁度良い。赤ワインに良く合う。

前菜代りに「アスパラガスのスープ」を頂く。これはホワイトではなく、グリーン・アスパラガス。クリームスープに、アスパラガスの穂先が幾つか入っている。ホワイトは勿論おいしいが、グリーンも悪くない。

調子に乗って、デザートにチョコレートケーキ(日本でも時々お目に掛かる「オペラ」というケーキ)まで頂くが、やはりこれはちょっと余計。甘過ぎて、半分しか食べられなかった。

以上、3皿に赤ワイン(グラス)とコーヒー。さて、これで幾らか? 現地貨9,000フォリント余り、日本円換算では4,000円と少し。やはりこれはリーズナブルと言うべきでしょうね。

「ひとりで何やってるの?」と突っ込まれても微笑んでしまえる、雰囲気の良いおいしいディナーでした。
◆カフェ内部

◆グリーンアスパラガスのスープ

◆メインの「フォアグラのソテー」 付け合せのジャガイモのローストもとてもおいしい

◆チョコレートケーキ「オペラ」 甘い!

Callas Cafe & Restaurant
Andrassy ut 20
1061 Budapest, Magyarorszag (Hungary)
http://www.callascafe.hu/index_eng.html
このサイトにあるパノラマ写真が素晴らしい。フルスクリーンで見ると、カフェの内部と外回り(隣のオペラハウスも覗く)の雰囲気が良く判る。何とこのカフェは2006年に出来たそうだ。そんなに新しいとは思えない落ち着いた雰囲気。