大貫妙子 「ピュアアコースティック 2009」

北京から帰って来て、楽しみにしていた録画を観る。2009年11月1日にJCBホールで行われた大貫妙子のコンサートを収録したもの。

私の歌姫−大貫妙子が1987年から毎年続けている「ピュアアコースティック・コンサート」が、2009年で最後を迎えたという。迂闊なことに知らなかった。僕もその22年の間に2度行った。最初はもう20年ほど前の東京グローブ座。もう一度は10年位前。場所は東京フォーラムだったか。20年前は、確かピアノとストリングス・カルテットだけのバックだったと思う。ピアノは、この22年間変わらずにフェビアン・レザ・パネ。20年前のストリングスはヴァイオリンの中西俊博が率いるカルテットだった。オリジナルの「ピュア・アコースティック」のCDも彼らをコアメンバーにしていた。

ストリングスは22年間の途中で金子飛鳥の率いるカルテットに変わった。2007年にリリースされた「ピュア・アコースティック」の続編とも言える「Boucles d'oreilles」ではこのストリングスがバックを務めている。今年で最後というのは、金子飛鳥が拠点をアメリカに移すことになったので「これを区切りに」ということになったという。

「ピュア・アコースティック」というコンサートのコンセプトは「電子楽器を使わない+ストリングス・カルテットを加える」ということになると思うけれど、電子楽器を使わない、ということで言えば「Unplugged」と似通った部分もある。MTVがUnpluggedのシリーズを始めたのは、確か90年代からだと思うので、妙子さんの方が少し早いかな。

今回は、初めの3分の1位は、ピアノ、ギター、ベースにドラムのカルテットだけで、途中からストリングスが加わった。

僕の知っていた「ピュア・アコースティック」では、ピアノやストリングスの他に、サックスなどもフィーチャーされていたけれど(印象的なソロも多い、「黒のクレール」とか「突然の贈り物」とか)、意外にもギターは入っていなかった筈だ。今回は山弦の小倉博和のギターが繊細で心地良い。その代りに管楽器は何も無い。

ドラムは林立夫。ついこの前のユーミンの番組にも顔を出していた。林立夫は、勿論「キャラメルママ(ティン・パン・アレー)」のドラムでユーミンの最初の2枚のアルバム「ひこうき雲」「ミスリム」のバックを務めていたけれど、妙子さんも「シュガー・ベイブ」の一員として「ミスリム」のバックコーラスをやっていた。もう30年以上前の話。

いずれにしても、このコンサートは妙子さんの声に聴き入る場所だ。あるインタビューで、妙子さんがこんな風に言っていた。

若い頃は声に張りやのびはあるんですが、声の中の情報量は少ないんです。お年寄りと若者では、一言の言葉の重みが違うように。年を重ねると声の中の情報量が増えるんですね。そうするとシンセやコンピュータ音楽の中だけでは、なんだか歌だけが浮いてくるんです。生楽器というのはやはり情報量が多いですから、その中で歌う方がおさまりがいいんです。

やっぱり彼女が言うと説得力があるね。

番組では、コンサートの他に別撮りのインタビューや子供の頃の写真も挿入されていた。インタビューはまだしも、子供の頃の写真は初めて見た。笑った顔は今も余り変わっていない。それにしても、彼女の地の声は歌声の繊細な印象とは少し違って(本当はかなり)、むしろ低いトーンの意志の強そうな声。そのギャップにむしろ安心。

「ピュア・アコースティック」にはまた行ってみたかったが、取敢えず終ってしまったのは残念。妙子さんのコンサートは、また見つけて今度は真面目に行かないとね。

大貫妙子 Gratefully Yours - PURE ACOUSTIC 2009 at JCB HALL -
(2009年11月1日 JCBホール

[曲目]
Monochrome & Colours
若き日の望楼
Hiver
snow
新しいシャツ
あなたを思うと
夏に恋する女たち
彼と彼女のソネット
黒のクレール
空へ
TANGO
春の手紙
四季
横顔
風の道
Time To Go
Cavaliere Servente
ベジタブル
突然の贈りもの
懐かしい未来 - longing future -
[演奏]
フェビアン・レザ・パネ(ピアノ)
吉野弘志(ベース)
林立夫(ドラム)
小倉博和(ギター)
ASUKAストリングス:
金子飛鳥(ヴァイオリン)
相磯優子(ヴァイリン)
志賀恵子(ヴィオラ
木村隆哉(チェロ)