刑事コジャック

今朝「刑事コロンボ」のピーター・フォークが亡くなったというニュースが流れていたが、実はこのところはまっているのは「刑事コジャック」の方。2週間ほど前にケーブルTVでやっているのに出くわして、それからは録画を仕掛けて見逃さないようにしている。デジタル・リマスタリングしてあるから画面はきれいだし、オリジナル放映時は勿論アナログ放送だったから、間違いなく今の方がいい状態で見ている筈。

刑事コジャック」は「刑事コロンボ」の何年か後に始まった。コロンボの成功を意識して作られたのは明らかだと思うが、対称的な造りで面白い。コロンボの舞台が西海岸のLAに対し、コジャックの方は東海岸のニューヨーク。よれよれのコートがコロンボのトレードマークだが、コジャックはいつも粒としたダブルのスーツを着こなし、スキンヘッドに帽子が様になっている。迫力ある出立ちなのに、タバコを控えてロリポップ・キャンディをくわえているのがご愛嬌。コロンボは「うちのカミさん」が口癖だが実際には姿を見せないし目立つ共演者はいない。刑事ドラマというより、ホームズやポアロ、あるいはフィリップ・マーロウなどの私立探偵ものに近いかも知れない。かたやコジャックは上司のオヤっさん、部下のクロッカーやスタブロスたちがいて一家を構える集団劇として刑事ドラマの古典的なスタイルを持っている、ともいえる。

両方の番組とも日本でも随分と評判を取ったが、それには作品自体の魅力もさることながら、小池朝雄森山周一郎というそれぞれピーター・フォークテリー・サバラスを吹き替えた俳優たちの声の魅力も大きかった。オリジナルの俳優たちの声は個性的ではあるが、日本人の我々にとっては余り魅力的には響かない。個人的には、映画などはオリジナルの声にこだわりたいのだが、この二つの作品については小池、森山両優の声がしっくりとくる。両方のドラマとも翻訳をしたのは、確か額田やえ子氏。今の放送はデジタルだから、元の英語の音声も聴けるが、オリジナルのリズムと意味を壊さず的確な訳を付けていて見事だ。その前に元々の脚本がよく出来ているのだが。

それにつけても、日本のテレビドラマの乱造振りはひどい。基本的には3ヶ月単位で、しかも視聴率の推移をみて途中でコロコロ筋立てを変えたりするらしい。すべてアメリカが優れているとはいわないが、向こうでは昼メロ(アメリカで言う「ソープ・オペラ」、スポンサーに洗剤や日用品メーカが多いから)はともかく、ゴールデンアワーのテレビドラマは基本的に半年間を準備・制作に充て、それを次の半年で放映するというシステムになっているらしい。日本では「相棒」辺りが似た様なシステムを取って人気シリーズになっているが、他の乱造ドラマよりはマシな脚本になっている様に思う。

それにしても、コジャックもコロンボもデジタルリマスタリングして本当に良くなった。元々がフィルムに撮ってあるので解像度はしっかりしている。HD以前のビデオの解像度ではマスタリングし直してもこうはいかないだろう。

そうそう、コジャック好きが昂じて、宮崎アニメの中では森山周一郎が主人公のポルコの声を演って、セリフ回しもコジャックにそっくりな「紅の豚」が私のお気に入り。