トーンキュンストラー管弦楽団演奏会(Musikverein)

ウィーンに到着してから3日目。夕方になってやっと少し青空が見えて来た。夕陽に映えるムジークフェラインが美しい。

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ムジークフェラインでの演奏会は、ほぼ2年振り。今回、初めてトーンキュンストラー管弦楽団を聞いた。指揮者は音楽監督の佐渡裕。日本への「音楽監督就任記念」ツアーを前にした演奏会になる。

プログラムは、ハイドン(交響曲第8番「夕」)、メンデルスゾーン(ヴァイオリン協奏曲)とリヒャルト・シュトラウス(「英雄の生涯」)。どういう脈絡の構成かは知らないが、結構面白かった。

このうち、日本に持って行くのは「英雄の生涯」だけ。前プロは同じハイドンの交響曲だが、三部作(「朝」「昼」「夕」)の最初になる第6番の「朝」。中プロ(協奏曲)は、メンデルスゾーンに代えて、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲かピアノ協奏曲が入る。メインは「英雄の生涯」か、ブラームスの交響曲第4番というプログラム。

ハイドンの交響曲は100曲以上もあるけれど、勿論知っている曲は圧倒的に少ない。特にひと桁台の番号の作品などは全く聞いたことがなかったし、どんな若書きの作品だろうと想像したが、なかなか面白い。ハイドンがエステルハージ候のオーケストラの副楽長になって、そのオーケストラの名手たちをフィーチャーしたとかで、各楽器のソロが多い。「バロックの合奏協奏曲を模して」という解説もみたが、むしろハイドンの弦楽四重奏曲にも共通する清澄な響きがして魅力的。

メンデルスゾーンのソロを弾いたクリスチャン・テツラフという人は名前こそ知っていたが、今回初めて聞いた。最近この曲をまともに聞いていなかった所為もあると思うが、良く耳にする思い入れたっぷりに弾かれがちな冒頭の第1主題を、弾き飛ばすくらいに素っ気なく弾くので肩透かしを食らった。後からCDで出ている別の演奏を聞いてみたら同じ様な弾き方なので、このソリストの好みなのだろう。もっとも冒頭の主題以外は、むしろ丁寧な弾き方をする人で好ましい。

さて「英雄の生涯」。正直、肝心の冒頭の主題の掴みがちょっともの足りない様な。もっとけれん味を利かせてくれてもいいのに、と思わないでもなかったけれど。ヴァイオリンの独奏はコンサートマスターのオランダ人女性。ハイドンの交響曲でも独奏があったがしっかりした気持ちの良い音のする人だ。

このオーケストラについては、佐渡さんが音楽監督になったことで日本でも有名になったが、「100年以上の歴史のある名門オケ」という紹介がある一方で、「ウィーンでは所詮、ウィーンフィル、ウィーン響、放送響の次の四番手だ」というネット雀の口さがない評判も目にした。まぁ、そういう評判はあてにならないし、どうでも良い。私自身は概して好感を持てた。

ひとつだけ確かに思うのは、指揮者にとってはムジークフェラインを(準)本拠地にして、音作りが出来て演奏会が出来るというのは魅力的だろうな、ということ。

今回の席は、上手2階のバルコニー席の中ほど。1列目なので、視界も問題無いと思ったら、並びの左側(つまり舞台に対して、私の席より後方)の高齢のご婦人が、私が少しでも身を乗り出そうものなら「見えない」とわざわざ手を出して制してくるのには参った。お陰でステージの3分の2くらい(指揮者も含めて)はまともに見えなかった。私の右側の人まで注意していたから、筋金入りのうるさ方だ。

Tuesday, 3. May 2016 19:00 Musikverein

Tonkünstler-Orchester Niederösterreich
Yutaka Sado, Dirigent
Christian Tetzlaff, Violine
Lieke Te Winkel, Solovioline

Program:

Joseph Haydn
Symphonie G-Dur, Hob. I:8, „Le Soir”

Felix Mendelssohn Bartholdy
Konzert für Violine und Orchester e-Moll, op. 64

Richard Strauss
Ein Heldenleben. Tondichtung für großes Orchester, op. 40

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